ムクナ豆の効果 - ムクナ豆百科
藤井義晴 東京農工大名誉教授(ムクナ会会長)の直接講話です。
在学中にムクナ豆に出会って以来、ほぼ半世紀をアレロパシー(他感作用)の
研究を続けてこられた藤井先生による厳選ムクナ学です。
ムクナは八升豆の学名Mucuna(属名)からそのように呼ばれています。これは1984年、農水省農業環境技術研究所にいた私がブラジルの宮坂四郎先生から「ムクナ」という名前で教わり、そのまま使ったことによります。調べてみると、実は日本在来種で、八升豆(ハッショウマメ)という和名がありました。八升豆の語源は、一本の植物から八升も豆が収穫できるとの説と、八丈島から伝わった「八丈豆」であるとの説があります。
忘れられていた在来種
ムクナ豆はインドとネパールの国境付近のタライ平原が原産地とされるマメ科の植物です。ドーパミンの元になる「L-ドーパ」が多く含まれていることで注目されており、世界三大医学の一つ、インド・スリランカの伝統医療アーユルヴェーダにもその名が記されています。ムクナ豆は昭和のはじめ頃まで食用に栽培されていました。ツルは10メートルも伸び、土壌を守り、肥料としても利用されます。
実は身近なムクナ豆
ムクナ豆はダイズとインゲンの中間の性質があり、煮豆、キントン、餡、醤油や納豆などに加工が可能です。
東南アジアではムクナの種子を水に漬けて種皮を取り、煮たり醗酵させて食用とします。中国や台湾では豆腐にしていました。日本では昭和のはじめ頃まで、ムクナ豆は西日本の暖地や八丈島などで栽培されていたようです。
ドーパミンと「L-ドーパ」
「L-ドーパ」はアミノ酸の一種で、脳内でドーパミンに変化します。ドーパミンは個人差がありますが、やる気や幸福感をもたらし、運動機能などの調節にも関わる神経伝達物質です。チロシンやフェニルアラニンというアミノ酸をもとに体内で生成されます。
ムクナ豆には、そんなドーパミンの元になる「L-ドーパ」が乾燥重量あたり4~5%程度も含まれています。ムクナ豆ほど「L-ドーパ」がたくさん含まれている豆は、他にありません。
「L-ドーパ」の含有量 ※乾燥重量あたり
「L-ドーパミンが適度に増えると、うれしい効果が期待できます。
ムクナ豆と女性
ハッショウマメは、種子にL-ドーパ(L-3,4-dihydroxyphenylalanine)という特殊なアミノ酸を、種子の乾燥重量あたり約4~5%含んでいます。L-ドーパは摂取すると、胃から吸収されて脳に運ばれ、脳内でドーパミンに変換されるので、パーキンソン病の薬になることが知られています。L-ドーパは、大量に摂取すると眠気を催すことが知られていますが、ハッショウマメ以外にも、ソラマメ種子にも0.2%程度含まれています。パーキンソン病の患者さんは毎日数グラムに達するL-ドーパを摂取していますが副作用は少ないとされます。
ドーパミンは、人間の脳内で、運動の調節、ホルモンの調整、学習、意欲、喜び、快楽に関与しています。ドーパミンは「快感」や「幸福感」を感じさせる神経伝達物質です。毎日を明るい気持ちで過ごし、「ワクワク感」を感じられるような行動をとったり、笑ったりすると、脳内でドーパミンが増えて「幸せ感」が高まるとされます。「何か新しいこと」にチャレンジしたり、恋愛をするとドーパミンが増えることも知られています。
子どもに対しては、ほめてあげることで、脳内のドーパミンを増やすことができ、子どもは学習意欲が高まるとされます。盆栽の世話をしたり、植物に水を与え育てて実や花をつける達成感を味わったり、ペットを飼って愛情を注ぐことも、ドーパミンを増やします。
女性の場合、加齢によって女性ホルモン(エストロゲン)やドーパミンが減ってしまうことが知られています。脳内でのドーパミンの減少は男性よりも早く、40歳代から始まると言われています。このようなときには、努めて明るい気持ちをもってよく笑うことが効果的ですが、そのような気持ちになれないときには、ハッショウマメなどを食べることで、脳内のドーパミンが増えて、幸せ感を感じることができる可能性があります。